2014年07月24日

どっきり天馬先生第2話前編

第2話「僕らの街にすごーい美人がやって来た!」
1983年(昭和58)4月18日放送 マドンナ山野かすみ=夏目雅子

小学校の健康診断で、天馬は東北からの転校生、保の方言をからかい
傷つけてしまう。下校を待って謝るが、保は無視して行ってしまう。

「バカヤロウー!そうです、トンマです!トンマのバカヤロウーです。
俺はトンマです。トンマ、トンマ、坂本トンマー!」
川に向かって叫ぶ天馬。
それを土手に寝転んでいた美女、かすみが見ていた。

数日後の夜、帰宅した天馬は、「三姉妹」からもれ聞こえる「みちのく
ひとり旅」に誘われ店に入る。マイクの前で歌っているかすみ、それを
うっとり聞いている寛太たち。歌い終わったかすみは、天馬を見ると
「あ、トンマさんだ」と言って、店を出て行く。京や寛太にかすみのこ
とを問詰められるが、天馬には一向に覚えが無かった。

部屋に戻った天馬は、一人考える。
「かすみ、かすみ・・・ない、覚えが全然ない・・待てよ、ある、あるよ
こっちが知らないうちに、いつの間にか女に好かれている、惚れられて
いるってこてはある。あるあるある、絶対にある!」
その瞬間に切れるハンモックの紐。
「そんなのあるわけないよなあ〜弓子〜」
足が絡まり宙吊りの天馬。

翌日、保が登校拒否になっていると京が伝えに来る。天馬はメモに書か
れた保の家を訪ねるが、あいにくと留守だった。保なら近くの大衆食堂
「みちのく」に居ると聞いた天馬は、その店を訪ねる。

すると、そこにはなんと、あのかすみがいた。保から話を聞いていた
かすみは、天馬に突っかかる。
「これ以上あの子を傷つけたら、ただじゃおかないよ」
「俺、謝ろうと思って」
「言葉じゃないんだよ、傷つけられた方の気持ちはわかりっこないんだ」
言うだけ言って店を出るかすみ。だが、外に近藤の姿を見かけ、慌てて
引き返すと、天馬の腕を強引に取って一緒に出て行く。

翌朝、再び保の家を訪ねる天馬。
「学校へ行ってくれ」、土下座して頼む天馬。
答えようとしない保。そこへ、突然かすみが飛び出してくる。
「そんなウジウジした男は東北にはいない」
かすみの言葉で、天馬の気持ちを素直に受け取った保は、学校へ向かう。
保の後姿を、微笑んで見送る天馬とかすみ。そして天馬は、「東北弁を
教えて下さい。保君と本当の友達になりたいんです」と、かすみに頼む。
その誠実な姿に打たれるかすみ。
その頃、交番に近藤が訪ねてくる。近藤は本庁の刑事だったのだ。

日曜日、大学時代の友達に会いに出かけた天馬は、電車の中で、地味な
服装をしているかすみを見かける。近づこうとすると、その前に近藤が
立ちはだかり、いきなりかすみの手を掴む。止めようとした天馬に近藤
は警察手帳を見せ、かすみはスリだと言う。驚く伝馬。

駅の公安室に連行されたかすみは、「どこに証拠がある」といきなり服
を脱ぎだす。証拠の財布が見つからず、とりあえず釈放されたかすみと
天馬は、喫茶店に立ち寄る。自分を信じきっている天馬を見て、何故か
寂しげな表情になるかすみ。雨に打たれてアパートに帰ると、廊下に保
が座っていた。かすみは寂しさを紛らすように、保を抱きしめた。
(つづく)
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2014年07月23日

「二丁目の未亡人」後記

「二丁目の未亡人」の中川九助は、定職についていない放浪人
今で言うところのフリーターですかね。丸首のセーターに茶色い
ズボン(十一がはいていたヤツです)、中学生用のズック製の
肩掛けカバンをいつも提げてました。

ユニオン作品では早い台詞回しでボケ役の力丸やゲンにツッコミ
まくってましたが、九助はゆっくりした詞回しのボケ役です。同時期
に出演していた「夜明けの刑事」の相馬課長がニヒルで押しの強い
役なので、それと対比させる意図もあったのかもしれません。

九助の延長線上に、半年後の「気まぐれ天使」加茂忍、「三毛猫
ホームズ」片山義太郎、「秘密のデカちゃん」日暮庄助があるわけ
ですね。
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2014年07月22日

二丁目の未亡人(以下略)7-3

第8回-3

人気の無いスーパー「プラザブラザー」で、九助の姉妙子と、一郎たち
の母は、神隠しではないかと、しみじみ語り合う。寂しさを分かち合い
手を取り合うふたり。

深夜便のトラックに便乗し、始発電車に乗って、信子はカジカ川に辿り
着くが、人影は無かった。一方、マイクロバスは、小さな川のほとりに
停まっていた。

「九助さん」
「ええ?」
「これで3本目ですよ」
「いや、僕のカンでは、この上流じゃないかと思うんだけどね」
「あきまへえ、もう絶対あきまへんで」
「そんなことないて。絶対ありますて。絶対ある」
「そうでしょ?頼みますよ、お兄ちゃん」
「ええかげんにしとかなあかんよ。くろうなってくるんやし」
「そこをなんとか。もう1本でいいから。この上流に間違いない。
ねえ、ロミーさん」
「ありますよ」

無邪気に遊ぶ女店員たちとは対照的に、浮かぬ顔を一郎と良治。
「お兄ちゃんよ、何でこんなんなっちゃったんだろうね」
「知るか」
「どうも、ここんとこ変だな」
「ヤセダンプか」
「何もかも、彼女が悪いってわけじゃねえけどよ」
「変な女だ」
「まいった女だよなあ」

川のほとりに立った信子は、二人で交わした「カジカ川の誓い」を思い
出す。思い出に浸る信子を、突然の嬌声が現実に引き戻す。振り返ると
九助、一郎良治、店員たちの姿があった。驚く信子。
「信子さん!それじゃ、これがカジカ川ですか?」
「ええ」
「カジカ川が見つかったぞ!」
「どこ?」
「ここ、ここ!」
カジカ川の水に触れ、喜ぶ店員たち。

「いやあ、信子さん、驚いたでしょ?いや、別に驚かすつもりは無かっ
たんですけど、結果的に驚かすことになっちまって。驚いたでしょ?」
「何、言ってんだ、バカ」、口を挟む良治。
「いや、しかしですね。4本目にカジカ川にぶち当たるなんて、これは
ラッキーですよ。そう思うでしょ、常務」
「で、あの、坊主は?」、尋ねる一郎。
「あ、そうだ。坊主、いや、洋一くんは?」
「それが、まだなんです」
「まだ?だって信子さん、100%の確立はどうしたんですか?」
「ごめんなさい。95%ぐらいなんです」
「95%?」
「95%だったら、まだいい」
「おい、お兄ちゃんよ。誰か店に置いとくべきだったな。せめて電話番
ぐらいよ」
「そんな余裕があったか?気がついたら、海走ってったんじゃねえか」
「私がまたいけないんです。突っ走り過ぎました」
「いや、そんなことはなかったですよ」
「見て!」
「ん?」

はるか彼方に、白いタオルを捲いた洋一が歩いている。走り出す信子。
崩れかかる洋一を、信子が抱え起こし、ふたりがしっかり抱き合った時
大きな歓声と拍手が沸き起こった。

それからカジカ川のほとりで、野外バーベキューが開かれた。食べ終わ
った信子と洋一は、二人で川べりを歩いた。これまでの関係を取り戻し
たことに満足し、たわむれ合った。

川のほとりに戻ると、一郎たちと店員たちは、騒ぎ疲れて熟睡していた。
戸惑うふたりの前に、九助が現れる。
「九助さん」
「九助さんは寝ないの?」
「ええ、九助さんは寝ないの。眠れないの。ほらほら、見てみて。猪み
たいに、まあ、死んだようになって、眠って。あそこまで、僕は無神経
になれませんよ。やんなっちゃうよ。僕よりも、野宿や放浪が上手なん
だから。山頭火も、僕みたいに眠れないで困ったんでしょうね。あ〜あ」
辺りを見回す九助。
「あ!見てください、菜の花ですよ。あそこへ行きましょう。我々詩人
は別の世界へ。さ、さあさあ、洋一くんも信子さんも。いらっしゃい
早く早く!」
先に立って歩く九助。後に続く信子と洋一。

菜の花畑に座る信子と洋一。そばでうなっている九助。
「う〜ん、菜の花や・・・菜の花や・・・菜の花や・・・菜の花や
なにはなくとも菜の花や」
「アハハハ」
九助の俳句に吹きだし、元の場所に戻ると、一郎と良治の姿しか無かった。
九助たちは、寝ているふたりを起こす。
「専務、ねえ、みんなどこいったんですか?」
「ええ?」
「あれ?」
驚いたように、辺りを見回す一郎と良治。
「そうだ。もしかしたら、みんな神隠しにあったんじゃないですかね?」
「バカなことを言うんじゃない」
「そうかもしれないわ。神隠しって言えば、私、この土地のおばあさんに
そんな伝説を聞いたことがあるんです」
「伝説?」
「風の吹く日、戸外に出て、山の稜線を見つめていると、得体の知れない
突風が吹いて来て、どこか遠くへ連れて去っていく」
「行こう、ヘンな気分になってきた」
突然、どこからか、笑い声が聞こえてくる。
「あれ?」

笑い声を追って、5人はみんなの姿を探し歩いた。藪の坂道、川のほとり
波音が聞こえ海が近くなった時、遠くで笑い声が聞こえた。5人はホッと
したように、笑い声の聞こえた方へ歩き出す。その姿が、陽炎の中で揺れ
やがて消えていった。青空には、風に乗って笑い声が流れていた・・・
(終)
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2014年07月21日

二丁目の未亡人(以下略)7-2

第8回-2

辺りを探したものの、信子の姿は既に無かった。
「山下!ヤセダンプの履歴書持って来い!」
「どうすんです?」
「あれに伊豆の住所が書いてあんだろ。早く持って来い!」
「は、はい」
「常務、本当に行くんですか?カジカ川まで」、尋ねる九助。
「ああ、嫌だったらいいよ。俺と兄貴で行くから」
「いや、行きますよ。行きますけど、車はどうするんですか?」
「なに?」
「車ですよ」
「あ、そうだ。お兄ちゃん、どうしよう。今日、工場にぶっこんじゃったぜ」
「頭使え。レンタカーがあんだろ。いいから、叩き起こせ!」
「よし!レンタカーだ!」
「あ、待て。待て待て」
「どうしたのお兄ちゃん?」
一郎は、ストリップ一座のマイクロバスを借りると言う。

「近所でっか?」
「静岡県の伊豆」
「そりゃ無茶苦茶や」
「あきまへんで」
「山下!車、借りることにしたから、よろしく」
「ええ?」
そこへやって来た店員達は、「自分たちも連れて行って下さい」と言う。
「そんな、冗談だろ?まさか本気でそんなこと。まさか」
驚く九助。
「まさか本気です」
「そんな日本語ないじゃないか。常務」
「あのね、まさか本気ですって言ったってな、そういうまさか本気に
俺たちは付き合っちゃいられないんだ。分かったから寝ろ!いいから
今日は寝ろ!」
「乗せて!」
「バカヤロウ!明日の店はどうすんだ!」と、一郎が怒鳴っても店員たち
は聞かない。「行く」「行かせない」と、もみ合う一同。やがて・・・

全員を乗せたマイクロバスは、カジカ川を目指し疾走していた。車中には
不機嫌なストリップ一座の面々と、楽しげに騒ぐ店員たち、苦虫をかみつ
ぶしたような一郎と良治の姿があった。
「ちょっと一座のみなさん、冷たい顔しないで。もう乗っちゃったんだからさ」
とりなす山下。
「さあ、サンドイッチですよ」
サンドイッチを配る九助。
「慌てないで、慌てないで。こんなこともあろうかと、サンドイッチ
用意してたんですよ、ハハ、みなさんどうぞ」

座席には、蕎麦屋の出前持ちもいた。何故乗ったのか、本人にも分から
ないようだった。
「ハハ、まあいいじゃないか。あ、そうだ。ねえ、ロミーさん、ミュージック
やりません?ミュージック、せっかく来たんだから
賑やかに、ハハ」
「でも専務さんがなあ」
「かはひまへえ、かまひまへん、やりまひょ、な、専務」
仏頂面の良治。
「・・・吉田くん、やりまひょ」
男性店員、吉田のギターに合わせ、歌い始める女店員たち。
並走していた自転車の青年まで乗せ、バスは伊豆を目指して走る。
ーCM−
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2014年07月20日

二丁目の未亡人(以下略)7-1

第8回(1)

洋一の姿が見えなくなったと聞いた九助は、妙子に電話する。
「あ、もしもし、姉さん?どう?洋一くん、帰ってきた?・・・まだ、いや
こっちには何にも・・・またあ、さっきも言ったろ、電話で。今、そんな
こと話してる場合じゃないんだよ・・・姉さん」
「私、代わります」
「やめろ。喧嘩になるばかりだ」、信子をとめる一郎。
「いいんです、いいんです。僕に任しといてください。もしもし
あ、姉さん、あのね、それじゃ、電話切るよ。え?ああ、分かってるよ。
くどいんだよ、姉さんも。じゃ、いいね、ああ」
うんざりした顔で、電話を切る九助。戻ってくる良治。

「どうだった、『キャプテン』」
「全然、姿見せないってよ」
「そうですか」
スーパーの主任、山下も戻ってくる。
「いませんねえ。手分けして、近所の公園や空地をあたったんですけどね」
「ホントにどうもすいません。みなさんに、ご迷惑かけて」
「いなくなって、どれぐらい経つ?」
「9時頃でしたから、3時間ぐらい・・・」
「さ、3時間も」、驚く九助。
「私、もう一度部屋見てきます」、飛び出していく信子。

だが、部屋に洋一の姿は無かった。後を追ってきた良治は、「何も食って
ねえんだろ」と、『キャプテン』で仕入れてきたサンドイッチを差し出す。
「すいません」
サインドイッチをつまむ信子。

『二丁目の未亡人はヤセダンプと言われる凄い子連れママ』
(出演者によるタイトルコール)

♪目覚めた時には晴れていた(主題歌)に乗せ、クレジットロール
ーCM−

山下主任の妹でストリッパーのロミー山田が、スーパー「プラザブラザー」
を訪ねてくる。信子が山下を呼びに行くと、ロビーは良治に、ストリッパー
募集のチラシを見せる。呆れる良治。

事務室の電話の前で、洋一からの連絡を待つ信子。ベルの音に、急いで
受話器を取るが、間違い電話と分かり肩を落とす。珈琲を入れる一郎たち
の前で、信子は混乱をさらけ出し、自分を責めて泣き出す。そして、良治
たちにしがみつく。だが、抱きしめようとすると、いやいやをして部屋を
出て行く。取り残され、分けのわからない一郎と良治。その時、女子寮
から、怒鳴り声が聞こえてくる。

言い争う九助と女店員。
「だから、何度も言ってるじゃないの。カジカ川、私、それしか聞いて
ないの。何百回聞かれても、それしか言えないの!」
「分かった、分かった、分かったよ。君はカジカ川としか聞かなかった。
愚かにもトンマにも!」
「トンマとはなによ!」
「だってそうじゃないか!いいかい?子供が真夜中に散歩に行くって言う
んだよ。その先を聞かないのは、非常識じゃないか!」
「だって、そんなこと言ったって、しょうがないじゃない」
「何がしょうがないんだ!」
入ってくる一郎と良治。
「こらこら、どうしたんだ?」
「専務!この人、『プラザブラザー』のCIAなんですか?」
「CIA?」、素っ頓狂な声を出す九助。
「だって、そうじゃないのよ。洋一くんがいなくなったの、まるで私のせい
みたいに追求するじゃないよ!」
「追求したわけじゃないよ。僕はしつっこく聞いただけで・・・」
「それが追求じゃないの!」
「そうよ!」
口々にわめきたてる女店員たち。

「黙れ!ピーチクパーチクわめくな!子供がひとりいなくなったんだぞ!
何だよ、みんな。ケロンションションみたいな顔して」
「私たちのどこがケロンションションなのよ!」
「ケロンションションじゃないか!この顔も、この顔も、この顔も、この顔も
この顔も、みんなケロンションションだよ!」
「いいわよ、分かりました。そんなに言うなら、私、この店やめます」
「馬鹿!関係ねえだろ、お前ら」、怒鳴る良治。
「いいえ、やめます!」
「私も!」
他の女店員も同調し、収拾つかない騒ぎになる。

「待ちなさい、静かにしろ!集団ヒステリー、起こすことないだろ!」
「そうだよ、集団ヒステリーはよくないよ、みんな。常務」
なだめる九助。
「今さら、そんなこと言っても始まらないわよ!」
「私、だいたいこの店気に入らなかったよ」
「どうして?」
「給料は安いし、休暇はろくにくれないし、独身寮なんて、ゴキブリの巣
じゃないの!」
「そうよ!」
口々に、不満をぶちまける女子店員。

「よし、分かった。もうな、お前らみんな、チロリン村に帰れ!
やめろ、やめろ」
けしかける良治。そこへロミーたちが現れ、「ストリッパーにならへんか」
と言う。尻込みする店員たちに、「さっの威勢はどうした」とはやす良治。
「私やります。脱げばいいんでしょ」と、ひとりが脱ぎ始め、止めようと
する店員たちと一郎たちがもみ合う。輪が解けると、何故か九助が上半身
裸になっていた。
「なんだよ、なんで俺がストリッパーやんなきゃ、いけないんだよ」
半べその九助。そこへ、信子が入ってくる。

「あ、信子さん」
「私、カジカ川へ出かけます」
「カジカ川ったって、カジカ川は伊豆でしょ?」
「大丈夫です。何とかなります。深夜便のトラックをつかまえて、熱海まで
出て、始発の電車に乗って・・・何とかなりますわ。洋一もきっとそうした
はずです」
「でも、洋一くんが伊豆へ行ったというのは、まだ・・・」
「九助さん、私、100%自信があるんです。あの子、本当にカジカ川に
行ったんです。そして、この私が来るのを待ってるはずです。じゃ」
毅然と言い残して出て行く信子。全員虚を突かれ、茫然とする。
「バカヤロウ!なにボヤボヤしてんだ!追え!つかまえろ!」
一郎の言葉で、慌てて探しに行く良治と九助。

深夜の道路、トラックで伊豆に向かう信子。
ーCM−
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2014年07月19日

二丁目の未亡人(以下略)6‐2

第7回−後編
その日、「プラザ・ブラザー」を姉と訪ねた杉沢医師は、信子に結婚を
申し込む。履歴書を残して帰る姉弟。

「・・・いずれ、誰かが申し込んでくると思った」
「まあな・・・彼女、あれで結構魅力的だからな」
「しかし・・あの胃腸野郎とはな」
歯軋りが顔になる一郎。すると、いきなり凶暴にテーブルの上の湯のみを
ぶっ飛ばして、九助が暴れ出した。
「ケッ!まだカッコつけてやがる!あれほど、ぼくが言ったじゃないか。
二人がモタモタしているから、こういうことになったんだ!いずれ誰かが
申し込んでくると思った、まあね・・・なんだそのザマは、嫌になっちゃうよ
イモ兄弟!」
「イモ兄弟とはなんだ!」
「イモ兄弟だから、イモ兄弟だと言ってるんだ!」
「この野郎!」
「やめろ、お兄ちゃん!」
その時、昼食の丼を持って来た信子に、三人はハッとなり、動きを止めた。
「どうぞ続けて・・・食事の前に喧嘩は片付けて頂きたいんです。だって
朝みたいになったら、勿体無いでしょう」
ニッコリ笑う信子に、えもいわれぬ顔をする三人。

昼食後、一郎は信子を誘って珈琲を飲みに行く。場所は「キャプテン」だ。
落ち着かない良次は、店の珈琲スタンドへやって来た。そこには九助がいた。
「おい、珈琲飲みに行こう、こんなんじゃない、もっと美味しい珈琲」
「そういうこと、この店の経営者が言っていいんですか?」
「いいから行こう、『キャプテン』」
「ええ?常務と信子さんがいますよ」
「面白いじゃないか。兄貴がどんな顔で話しているか見に行こうよ」
「お断わりします。ぼくはもうイモ兄弟とつるんで歩くのはやめるんです。
ぼくの個性が摩滅していくばかりだ」
「勝手にしろ!」
怒って珈琲スタンドを出て行く良次。入れ替りに主任の山下が入って来る。
「まったく、この店の兄弟は度し難い。うんざりだ。ツラも見たくない。この
五月の、黄緑色の季節に狂って、兄弟心中でもしてくれないかね、山下君」
「そんなにうんざりなら、店へ来なければいいでしょう」
「それが出来れば、来るもんか。判らない?あのね、この店の兄弟バカはね
人間としてのシツケがなってないの、まるっきり、え、そうだろ。そんな二人
をぼくが見捨てられると思う?いいんだよ、君には判ってもらえないだろうね
ぼくのこの複雑な気持ち・・・ついでに、珈琲もう一杯」

その頃、一郎は杉沢の結婚申し込みの事を信子に話していた。「何も感じない」
という答えを聞き、杉沢の履歴書を破る一郎。ちょうど店に入って来た良治も
さらに細かく履歴書を引き裂いてしまう。それを見た信子は、履歴書に纏わる
亡き夫との出会いを語り、怒って席を立ってしまう。唖然
とする一郎と良治。
信子は洋一に、杉沢の結婚申し込みと、履歴書の一件を話す。
『二人とも私が好きなのよ』『ヤセダンプも好きなんだ』『誰を?』
『どっちか』『そんな事答えられない。二人とも好きなのよ』
洋一は散歩してくると出て行き、信子は亡き夫に語りかけ酒を飲む。

その頃、何も用意されていない食卓に、一郎、良治、九助が座っていた。
「晩飯、無理ですね。彼女は来そうにありませんよ。ポーカーでもやりますか」
九助の言葉に、兄弟は返事もしない。深い溜息をつく九助。
「わざとらしい溜息はよせ!」
「でも、溜息もつきたくなりますよ。ああ、今朝のあの素晴らしき共同生活も
つかの間の夢か・・・ぼくはね、ハムエッグを食いながら、一瞬思ったんですよ。
こんな生活が未来永劫続かないものかって・・・」
「しかし、山頭火はひとりだった」
「ひとりもよし、二人もよし三人もよし・・・人間の数の問題なんかどうでも
いいんですよ。要は生活の中味・・・親子とか、兄弟とか、恋人とか、夫婦
とか、そういうめんどうくさい垣根を取っ払った新しい関係・・ぼくは男とか
女とかでなくて、人間そのものを愛しちゃう・・・そこがリアリティがないん
だなぁ・・・それにひきかえ、腹が減っているという現実は、ひどくリアリティ
があるなぁ・・・」
九助のお喋りにも、一郎と良治は黙っていた。
夜がふけ風が吹き始める中、信子は不吉な予感を感じ始めていた。洋一の姿が
見えなくなったのだ。洋一はどこに行ったのか・・・
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