2014年08月02日

どっきり天馬先生第12話-1

「酔いどれ天使に天馬胸キュン」
下条律子=音無美紀子

天馬と看護婦の栗子は往診の帰り道、多摩川の河川敷で合唱の練習をして
いる子供たちに出くわす。歌声に聞きほれ、しばし立ち止まる天馬たちだったが
合唱を指導している近藤ジョージは、「邪魔だから向こう行って」と二人を
追い払う。それなら自分たちも合唱隊を作ろうと話す天馬と栗子。帰宅した
天馬は、アフリカの民族衣装を身に着け、現地の歌を踊り歌う。想像していた
合唱隊とイメージが違いすぎるので、栗子は不満顔。そこへ、近所の老人宅
から往診を依頼する電話が入り、天馬は栗子と出かける。

老人の病状は大したこともなく、天馬と栗子はほどなく老人宅を辞去する。
その帰り道、公園でひとり合唱の練習をするルミコを見かける。熱心な姿に
感心する天馬と栗子。その夜、スナック「三姉妹」でアルコール中毒の女性
下条律子が暴れていた。警官の貫太が落ち着かせようとするが上手くいかない。
駆けつけた天馬は、律子が恩師綾子先生の名を口にするのを聞き、すぐに連絡
律子を綾子先生の家に送り届ける。

綾子先生は、律子が借金取りに追われていることを知ると、「匿ってくれ」と
天馬に頼む。昨夜と違ってしおらしい律子の美しさに、天馬はポーッとなる。
「三姉妹」に珈琲を飲みに行った天馬は、昨夜とは打って変わって律子を庇う。
「またか」というように顔を見合す京たち。

散歩に出かけた天馬は、幼稚園から聞こえて来る綺麗な歌声に誘われ、教室の
中を覗く。すると近藤が風邪をひいて声が出ないルミコを叱っていた。それを
見た天馬は、ルミコを庇う。

翌日、近藤がルミコを小宮医院に連れて来る。日曜に発表会があるので、それ
までに治してほしいと言う。そんな頃、「三姉妹」に柄の悪い男たちが現れる。
男たちは警官の貫太を見ると、そそくさと店を出て行く。ルミコを看病して
いた近藤は、ロケットに入っている母親の写真を見せられる。一方、天馬は
暴力団風の男が訪ねて来たと綾子先生に聞く。
posted by tetsumania at 07:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 詳論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月01日

どっきり天馬先生第8話

「僕らは学校より塾の方が好きなんだ!?だから・・・」
和子先生=大場久美子

天馬は往診の帰り道、小学生3人組がバイクの男に怒鳴られている所に出くわす。
数日後、その3人組が小宮医院に現れ、ニセの診断書を書いてくれと言う。怒った
天馬は3人組を一喝して追い返すと、「休診だ!」と宣言。しかし美人の患者が
来たと聞き、いそいそと診察を再開する。その患者、和子は小学校の教師だった。
和子のクラスでは、例の3人組がトップの成績を取っていたが、授業中に居眠り
したり、京のいる保健室に連日やって来ていた。

喫茶店「三姉妹」でその事を聞いた天馬は、和子を送って行く途中でバイクの男と
また出くわす。和子がバイクの男と帰るのを見て、天馬は亭主持ちと誤解する。
実はバイクの男は和子の兄ジョージで、寺の住職だった。
数日後、3人組は女の子2人を連れ、また保健室にやって来るが、そこには天馬
がいた。天馬と京は、子供達から「学校より塾の方が面白い」という話を聞く。
その夜、天馬は「あすなろ塾」を訪ね、塾教師の雄介と話す。「あすなろの子供達
をヒノキにして、いい中学に入れてやるのが僕の生きがいです」という雄介の言葉
に、天馬は引っ掛かる。

翌日、保健室で天馬がその事を話している時、和子がやってくる。天馬は、和子
が子供達を成績順に並ばせている事について、「感心しませんね」と言う。
『私自身、小学生の時に成績順に並ばされた事ありますけど、子供達にとっても
 今度は頑張ろうって、励みになるんです』
『それは和子先生が成績優秀だったからですよ。こんな事言うのもなんですが
 僕は小学校の頃、やはり成績順に並ばされた事があるんです。僕はワンパク
 でしたから、ビケに並ばされましてね』
『天馬先生が?』
『ええ、その時好きだった女の子には嫌われるし、その時子分だった連中も
 他のガキ大将に取られちまうし、僕は未だに、その先生の事をよく思って
 ません。ですから、和子先生には、一番ビリに並ばされる生徒の、その子
 の気持ちを思ってあげるような、そんな先生になって欲しいんです』

和子は帰宅途中、河川敷で授業をしている雄介と、生き生きした子供達の姿を
見る。翌日、和子は学校を無断欠勤した。心配した天馬は自宅を訪ねるが
兄ジョージに下心を疑われ座禅を組まされる。
その夜、天馬は「三姉妹」で雄介に会い、和子が雄介の元を訪ねた事を聞く。
『そうか、お前さんのとこに行ってたのか・・あの人はあの人なりに、一生懸命
 水をやってるんだ。みんながヒノキにならなくたってさ、どんぐりの木はどん
 ぐりの木、柿の木は柿の木で、そのまま大きくなればいいんで、見事に花を咲
 かせればいいんだよ』

翌日、和子が休んだと聞いた天馬は代役を買って出て、子供達に語りかける。
『和子先生はな、今勉強してるんだ』
『先生が勉強すんの?』
『先生だって勉強するわ、当たり前じゃねえか』
『何の勉強?』
『先生はな、人生の勉強をしてるんだ』
『人生?』
『そう、人生の勉強だ。これは国語や算数や理科よりもな、ずっとずっと、
 この世の中で一番大事な勉強だ。よーく覚えとけ。いいな!』
『はーい』
『よーし!』
廊下で立ち聞きしていた和子は、帰り道に雄介に出くわす。
「学校に出て下さい」と励ます雄介。

日曜日、和子は河川敷で3人組と出くわす。一緒に釣りをするが、魚を引き上げ
ようとして、川に落ちてしまう。びしょ濡れになって、水を掛け合う和子と子供達。
子供達と銭湯に行った和子は、男湯から「明日は学校に来てよ」と呼びかけられ
思わず涙する。
学校に戻った和子は、生き生きと授業を始める。それを見た天馬は、子供達を
連れ寺で座禅を組むが、住職のジョージに狙い撃ちされ、逃げまくるのであった
posted by tetsumania at 08:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 詳論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月31日

生誕72年

ショートケーキムード

今日は鉄ちゃんの誕生日。存命であれば七十二歳。同世代で元気な人が大勢いるし、七十代になった鉄ちゃんも観たかったです
全盛期、テレビで観ない日はないくらいドラマに出つづけていたことを振り返ると、凝縮された時間を一気に駆け抜けてしまったのかもしれませんね。もう少し、ゆっくり生きてもよかったのに…

今日は懐かしい主人公たちと静かに祝いたいと思います
posted by tetsumania at 09:16| Comment(5) | TrackBack(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月30日

どっきり天馬先生第10話

※天馬が住んでいる小宮医院が大田区鵜の木にあるという設定なので
多摩川近辺のロケが多かったのだと思います

「きらめく星座にさようなら」

キャスト・・・坂本天馬(鉄ちゃん)弓子(斎藤慶子)愛子(赤木春恵)
沢口竜三郎(北村和夫)京(木内みどり)友(沖直美)礼(小林聡美)
近藤ジョージ(鹿賀丈史)霧子(木の実ナナ)

望遠鏡を見ていた「三姉妹」のマスター竜三郎は、夜空に光る不思議な物体を
撮影する。同じ頃トイレで、愛子は、テン助人形がトイレットペーパーを
持ってきたを見て悲鳴をあげる。同時に天馬が寝ていたハンモックの紐が切れ
床に落下、大地震と勘違いする。

翌朝「三姉妹」で珈琲を飲みながらテン助が行方不明だと話す天馬。
竜三郎は「UFOに乗せられたんだ」と言い、京にたしなめられる。
病院に戻った天馬はチリ紙交換に新聞を出してくれと頼まれる。
渋々持って行くと、運転していたのは美女の霧子、ポーッとなる天馬。
そして学校では、近藤のクラスに、霧子の甥の竹山英一が転校してくる。
生徒たちは英一のイニシャルがE.Tなので、「宇宙人だ」とはやし立てる。

その夜、天馬は古雑誌を持って霧子に会いに行く。一方、竜三郎は、「UFOを
探しに行く」と遺書を残して姿を消す。竜三郎は、霧子が住む、河原の小屋に
出かけたのだ。霧子がドラム缶風呂に入浴している様子を双眼鏡で盗み見てい
ると、天馬が現れる。双眼鏡で覗く天馬たち。その時、銀色の服を着た近藤に
そっくりな男がやってきて、霧子の羽衣を盗む。阻止しようと飛び出す天馬。

『やっつけてやる、来い!』
近藤が投げた白墨が顔に張り付く天馬。
『この、よくもやりやがったな。なんだ
これは。白墨じゃないか!』
『怒ったか、マントの逆さま』
『マントの逆さま?』
『言ってみろ』
『マントの逆さま、マントの逆さま・・・トンマ・・バカヤロウ!俺は天馬だ!
天かけるペガサスよ』
『ペガサスは10月の星だ。まだ早い』
『バカヤロウ、4月の新番組からちゃんと出番があるんだ。このー!』
近藤に向かって行く天馬。もみ合う二人。そこへ霧子も現れ、羽衣を返してく
れと頼む。羽衣を取り合う二人の間に天馬が入り、近藤をドラム缶風呂に叩き
こむ。高笑いする天馬。小屋に招かれた天馬は、霧子に勧められた酒を飲んで
気絶してしまう。気がつくと、何故か自分の部屋に寝ていた。「夢か・・・」と
呟くが、椅子のテン助が「ケケケ」と笑ったので、また気絶してしまう。

数日後、天馬は弓子の心臓手術について、愛子と話す。
『ねえ天馬、今朝心臓外科の神原先生からお電話いただいてね。先生のグループ
で執刀しても構わないって仰ったの』
『断ってよ』
『そんなこと言ったって、あんた』
『そりゃね、神原先生は心臓外科の権威だよ。50%の確立があれば、やった方が
いい、そう言うに決ってる。しかし弓子は女だよ。弓子の身体にメスを入れて
肋骨を切り取るなんて、そんな・・・』
『それは前から判ってたことじゃないの。いつか覚悟しなくちゃならないのよ』

『判ってるよ、判ってるよ。俺だって外科医の端くれだよ。冷静に判断しな
きゃいけないっていうことは判ってる。俺が船医をやってた頃、大西洋の
ど真ん中で盲腸になった。船員たちに鏡を持たせて、自分で自分の腹を切った
んだよ。そして醜い傷痕が残った。その醜い傷痕は、外科医としての俺の勲章
だよ。しかしね、弓子はまだ嫁入り前の身体だよ。その身体に醜い傷痕を残す
なんて・・・そんなの残酷だよ。可哀想すぎるじゃないか・・・おばさん
わかってよ』

小学校の健康診断に赴いた天馬は、診察中に不思議な歌を聞く。屋上に駆けつ
けると、給水塔の上で英一が歌っていた。ETと騒ぐ生徒たち。救助のために
用務員が梯子を上るが、手摺に雷が落ち落下してしまう。益々騒ぐ子供たち。
校長は騒ぎを収める為、みんなの前で英一の健康診断をしてくれと天馬に頼む。
給水塔に上った天馬は、英一に向かい合って座る。

「男らしく、みんなの前で裸になってみろ」と言う天馬。おずおずとシャツの
ボタンを外す英一。その胸には大きな手術痕があった。驚いた天馬は、英一に
近寄ると、シャツのボタンをはめる。
「そうだったのか・・・もう泣くな」
天馬は英一を強く抱きしめた。

振り出した雨がガラスに当たっている保健室。天馬は霧子と向かい合う。
『英一君は確かに、他の子供達とは身体が違っていました』
『あの子、友達とも仲良く遊んだことないんです。いつも手術の痕を、からか
われたり、いじめられたりして・・・先生、ありがとうございました』
『霧子さん、ボクは宇宙人を信じています。神様も信じています。それは
この地球には何十億という人間がいるんだから、神様もいちいち手が回らない
かもしれないが、でも、歯を食いしばって我慢をしていれば、神様も友達に
なって味方になってくれますよ』
『先生・・・』
『意地悪な子供たちばっかりじゃないんです。誰かがひとり、弱い者の味方
になってやれば、そのうち意地悪してる子が恥かしくなってくるんです。
ボクは宇宙人を信じていますし、神様も信じています。そして、それよりも
もっと、ボクは子供たちを信じています』

天馬は教室で、「ETは君と仲間になりたがってる。一緒に遊んだり、勉強し
たい、そう言ってる。君たちの仲間にしてやってくれないか」と生徒たちに
向かって語りかける。子供たちはETを受け入れ、そして宇宙人だった近藤は
姿を消す。そして夕方、河原の小屋がブルドーザーで撤去される。駆けつけた
天馬は霧子からの手紙を受け取る。そこには、「ありがとう。いつまでも忘れ
ません」と書かれていた。

その夜、天馬は弓子と夜空を見上げた。

『あ!お兄ちゃん、流れ星』
『ほう、アハハ』
『東京でもこんなに綺麗に星が見えることがあるのね』
『ああ』
『こうやって、お兄ちゃんと星を見るなんて、久しぶりね』
『ホントだね。みんな星空を見上げることを、忘れてるんだよ』
夜空には、満天の星が輝いていた。
posted by tetsumania at 07:52| Comment(1) | TrackBack(0) | 詳論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月29日

どっきり天馬先生第9話後編

帰宅した天馬は、弓子の具合が悪いと聞く。問詰められた叔母愛子は「女の
人にはあるでしょ。男にはないものが」と遠回しに答えるが、ピンとこない
天馬は、弓子を無理やり寝かしつける。
『なあ、弓子』
『なあに?起きていいの?』
『だめだ』
『なによ』
『お前、林檎ジュース飲みたくないか?』
『林檎ジュース?』
『ああ、お前が小さい時俺が作ってやったじゃないか。林檎をゴショゴショ
おろしてさ、布巾でギューギュー絞ったやつ。お前、大好きだったろ?』
『そうそう、私あれが飲みたくて
仮病使ったりして』
『ハハ、そうだったな。おふくろも、親父も死んじゃって、あの時俺、慌て
ちゃってさ。おかゆまで作ったんだぞ』と弓子の鼻先を突付く天馬。
『お兄ちゃん』
『うん?』
『私飲みたい。今日は病気じゃないけど、あのジュース飲んでみたい』
『よーし、じゃ、おとなしく寝てるか?』
『うん』
『よーし』

台所の流しの前に立ち、下し金で一所懸命に林檎をすりおろす天馬。
『心臓か・・・』
弓子の病気を思い、切なさがこみあげる。

数日後、天馬の元に、義理の祖母の住所が判ったと、冬子から電話が入る。
冬子は祖母の住んでいる水戸を訪ねるが、弟は二年前に死んでいた。冬子に
呼び出された多摩川河川敷に駆けつけた天馬は、その話に驚く。その夜、大き
なショックを受け酔い潰れた冬子を、天馬は旅館まで送り届ける。
『さ、ここに横になって。今、布団敷きますからね』
突然、天馬にしがみつく冬子。
『私、どうしたらいいの。どうしたらいいの』
泣きながらしがみつく冬子。
何も言えない天馬。
やがて眠りに落ちた冬子に、天馬は
布団をかける。涙を流して眠ってい
る冬子の顔を、やりきれない思いで見つめ、天馬はそっと部屋を出て行く。

翌日、冬子は啓介に会いに行き、とんかつ定食をご馳走する。往診の帰り道で
本当の姉弟のように仲良く歩く姿を見た天馬は、二人の微笑みながら見送った。
それから数日後帰郷する冬子を、天馬と啓介は見送る。
『天馬さん、それじゃ私はここで』
『いや、駅まで送りますよ』
『いえ、人に送られるの好きじゃないし、ここでお別れしたいんです』
『しかし、荷物もあるし』
『天馬さん、今度の事は本当に色々お世話になりました。ありごとうござい
ました』頭を下げる冬子。
『そうですか。冬子さん、くれぐれもお元気で』
『天馬さんも。啓介君、君のことずっと忘れないわ。さよなら。失礼します』
歩き出した冬子に駆け寄った啓介は
「電車の中で読んで」と手紙の入った
ビンを渡して、一目散に走って行く。頭を下げ立去る冬子。その後ろ姿を
笑顔で見送る天馬。

新幹線車中で、冬子は啓介から貰った手紙を開く。そこには「お小遣いを貯めて
大好きなお姉ちゃんに必ず会いに行きます」と書いてあった。手紙を両手で握り
しめる冬子。一方天馬は、啓介を真似て、手紙を入れたビンを川に放り投げる。
『天馬先生、見たぞ』と声をかける啓介。
『なにを?』
『そんなことやったって、島根にはつかねえぞ』
『どうしてだよ!』
『多摩川の先は太平洋だよ!』と言って逃げる啓介。
『このヤロー!』と追い駆ける天馬。

『前略冬子さま。その後お元気でいらしゃいますか?ぼくもおかげさまで元気
です。お会い出来る日を楽しみに。乱筆乱文にて失礼します。坂本天馬より』
posted by tetsumania at 07:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 詳論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月28日

どっきり天馬先生第9話前編

「ブッシュマンに手紙を出した少年」

キャスト・・・坂本天馬(鉄ちゃん)弓子(斎藤慶子)愛子(赤木春恵)
沢口京(木内みどり)友(沖直美)礼(小林聡美)戸田貫太(赤塚真人)
近藤ジョージ(鹿賀丈史)冬子(市毛良江)

休診の午後、天馬は弓子と多摩川へ釣りに出かけ、手紙の入ったビンを網で
すくう。ビンの中には姉宛ての手紙が入っていた。天馬たちが読んでいると
少年がひったくって逃げて行く。その少年は、昨夜天馬が煙草の自販機前で
怒鳴りつけた、啓介という名の少年だった。帰宅した天馬たちは、叔母愛子
に手紙のことを話す。
『それにしてもおかしな子ね。お姉さんに手紙を書きたいんだったら、ちゃんと
封筒に入れて切手貼ればいいじゃない』と言う愛子。
『そうじゃないのよ、叔母さん』
『なによ』
『これはね、夢、いたいけな子供の夢』
『夢?』
『ああ』
『その子の夢を説明してよ』
『これはね、あくまでも俺の想像だけどね、この子には愛するお姉さんがいる』
『それはわかってるわよ』
『だから、俺が言いたいのはそうじゃなくて、その愛してるお姉さんが行方不明』
『行方不明のお姉さん?』
『そうだよ。今の時代、よくあるだろ。子供を捨てて親が蒸発しちまうとかさ
サラ金に追われて、家族がバラバラになっちまうとかさ』
『そうか、じゃあその子も何かの理由で、お姉さんと別れ別れ』と言う弓子。
『その通り。はい、よくできました、ハハハ』
『それはいいから続き』
『うん、いや、その少年はね、お姉さんに会いたいと思ってるわけだよ。毎日毎日
寂しい思いで、お姉さんに会いたいと思ってるけど、どこにいるかわからない。
そのお姉さんに、毎日毎日のことを綴って、ビンに入れて川の中に流す。やがて
このビンはプカプカ流れて、いつか、どこかにいるお姉さんに届くだろう・・・
そういう悲しい悲しい夢の物語』
『可哀想ね、こんな子供がそんな悲しい夢背負って』と涙ぐむ愛子。
『まあ、そうだね』
『あるいは、両親も兄弟もいない、寂しい子なのかもね。私にはお兄ちゃんも
叔母ちゃんもいるけど、でもその子には誰もいない・・・』
『そうだね・・・』
しんみりする天馬たち。

数日後、天馬は往診の帰り道で、和服の美女冬子に交番の場所を訪ねられる。
交番に案内した天馬は、冬子が弟を探していると聞き、メモにあるアパート
まで連れて行く。しかし、弟たちは既に引っ越したあとだった。喫茶店「三姉妹」
で、冬子の弟が小学校3年生と聞いた天馬は、啓介のことを思い出す。冬子は
ぜひ会わせてほしいと言う。天馬は啓介を探し出して冬子に会わせるが、手紙
に書いた姉のことは全て想像で、弟ではなかった。宿泊先の旅館に戻り、天馬は
申し訳なさいっぱいの顔で、冬子の前に座っている。

『どうぞ崩してください』
『本当に申し訳ございませんでした。許して下さい』
『いいんです、もう。私が困りますから。むしろ私、ここまで天馬さんに
お世話になって、感謝してるんです』
『いや・・』
『でも、どうしてなのかしら』
『は?』
『見ず知らずの私に、ここまで親切にして下さるなんて、どうしてかなと
思って。だって私、隣りに住んでる人の顔も知らないのが東京の人だって
聞かされたんです』
『それはたぶん、兄妹っていうことかな』
『兄妹?』
『ええ、実は僕にも、妹がいます。たった一人の妹が。だけどその妹、身体が
悪くて。心臓の病気なんですが、手術をすれば五分五分だと言われています。
つまり50%の危険率があるわけです。それを思うと、どうしても手術に踏み
切れなくて、今日まで・・・実はぼく、船に乗っていたんです』
『船に?』
『ええ、船の船医をしていたんです。大学を出てすぐに、ゴチャゴチャした
人間関係よりも、広々とした海へ出て、そこに自分の人生を見つけよう、そう
思ってたんです。でも、妹が病気だっていうことを知って、慌てて飛んで
帰ってきました・・・海は、今でも戻ってみたいです。でも、妹はいつ死ぬか
わからない。それまで、せめてそばにいてやりたいと思いまして』
『うらやましいわ、私』
『うらましいって?』
『そこまで純粋に妹さんを思える天馬さんが、うらやましいわ』
『だって、あなただって弟さんが』
『私の場合は、純粋じゃないんです。天馬さんと違って、弟のことをそこまで
思ってるわけじゃない・・・』
冬子は、父親の再婚相手の連れ子が弟で、二年後に若い男と蒸発したその女を
今でも許せないが、父親の遺品に弟名義の貯金通帳を見つけ、どうしても会い
たいと思ったと話す。
posted by tetsumania at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 詳論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする